映画『七人樂隊』公式サイト 香港を代表する七人の監督による“香港七重奏”

「別れの夜」パトリック・タム(譚家明)監督

大家好(ダイガーホウ)!!
香港映画をよくご覧の方にはこの挨拶に全く違和感はないかと思いますが、初めて見る方に一応説明を……「大家好!」は「大家さんのことが好き!!」と愛の告白ではなく「皆さん、こんにちは」の意味です。
私は『七人樂隊』の宣伝を担当している小西晴文です。中華圏の映画が大好きで、特に香港は映画だけでなく、広東語自体や広東語ポップス(特にケリー・チャン)、香港そのものも大好きです。今回『七人樂隊』の宣伝という立場で、作品のことを私なりに紹介させて頂くことになりました。どうぞ宜しくお願い致します。

8月19日に上映が開始された「WKW 4K」。香港のウォン・カーウァイ監督自ら4Kレストアした代表作5本を一挙に上映する特集上映。初めてウォン・カーウァイ監督作品を観るという若い観客も劇場に詰めかけているらしい。そんなWKWで今回上映されていないが必見の作品がある。レスリー・チャン、マギー・チャン、カリーナ・ラウ、アンディ・ラウ、ジャッキー・チュン、トニー・レオンと豪華スターが出演した『欲望の翼』だ。1960年の香港を舞台に、これまでの香港映画では見られなかった映像美で描いた作品。その『欲望の翼』の編集を担当したのがパトリック・タム(譚家明)。『七人樂隊』のエピソード3「別れの夜」の監督である。

1989年、家族と共に移民するためイギリスに出発する2日前、ガンフェイはボーイフレンドのカーラムを家に呼び出す。別れを前にそれぞれの想いをぶつけ合う二人。そして二人は“別れの夜”を迎える……

このエピソードに登場するのはガンフェイとカーラムの二人のみ。最初から最後まで二人しか画面に現れず、まるで人がごった返す香港から二人だけが残され、二人だけの世界になったかのようである。

カーラムを演じるのはパトリック・タム監督の『父子』(2006年)で“子”を演じたイアン・ゴウ。『父子』での演技が評価され一躍子役スターになったものの、女優であった母の猛反対に遭い芸能界から引退。今回『七人樂隊』で16年ぶりにスクリーンに帰ってきた。

劇中“別れの夜”に流れる曲は「深夜港湾」。オリジナル曲は山口百恵の「秋桜」で、歌うのはヨリンダ・ヤン。元おニャン子クラブ研修生という経歴を持ち、香港に戻った後歌手として活躍していた。「秋桜」は結婚のため家を出ていく娘の母親への想いが綴られた歌詞だが、「深夜港湾」では全く違った内容になっている。どのような内容かは作品を観て欲しい。

また、カーラムが突然「お茶と包子を用意して話し合おう」と言ったのはチャウ・シンチーの物まね。チャウ・シンチー主演のTVドラマ「蓋世豪侠」でのセリフで、当時流行語となり、誰もが真似をしていたらしい。このように本エピソードでは1980年代末の懐かしい要素がちりばめられている。

ちなみに私が初めて香港に行ったのは1988年12月。留学していた北京からまる3日列車を乗り継いで香港に到着。香港で私が挙動不審だったのか、警官に職務質問され、パスポートを見せると「お前、本当に日本人なのか?」と聞かれて驚いた思い出がある。その時、ガンフェイとカーラムが怪訝そうな目で私を見ながら通り過ぎていたかもしれない……

『七人樂隊』宣伝担当 小西晴文


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