映画『七人樂隊』公式サイト 香港を代表する七人の監督による“香港七重奏”

2022.09.11

本作の企画意図について、七名の監督それぞれによるコメントをこの度ご紹介!
さらに、サモ・ハン、アン・ホイ、ユエン・ウーピン、ジョニー・トーが一堂に会した貴重な写真も到着いたしました!

■「稽古」 サモ・ハン(洪金寶)監督からのコメント■
他の監督達が『七小福』について語っているが、私にはまだまだ伝えたい宝物のような記憶がたくさんある。この作品の中の全てが現実であり、私の子ども時代の幸せだった時期についての話だ。私の師匠に関する懐かしい思い出がいくつもあるのだ。
師匠は非常に厳しかった。映画内では彼の指導方法についての詳細は省略して、ある一つの、とても大きな意味を持つ話を取り上げた。私たちの頃と比べると、今の若い世代の人たちの生活は快適になった。身体的な負担も少ない。もしもこの現代で、師匠の厳格な指導方法を行ったとすれば間違いなく法を破るだろう。
子どもたちの多くは、私もそうだったように勉強が好きではなかった。彼らの家族はそんな子どもたちに何か秀でたものを身につけさせようとしてカンフーや演劇を習わせようと師匠のところに子どもたちを送り込んだ。それがどんなに過酷なものになるかも知らずに。
しかしながら、そういった厳しい指導を受けていなかったら今の私たちは存在していない。
私は“私たちの芸術の形や技術“を伝えていきたい。既にそれらは薄れつつあると感じている。若い人たちに浸透していく方法がないのだ。植物は成長するための刺激のようなものを必要とするが、私たちは若い世代の背中を押すような刺激を持ち合わせていない。
もし私たちが芸術を伝えていくことが出来れば、それは素晴らしいことだ。なぜならそれは、今私が立っている場所に導いてくれたものだからだ。

■「校長先生」 アン・ホイ(許鞍華)監督からのコメント■
「校長先生」は、ある種の恋愛映画だ。
この物語を選んだのは、人々が恋愛に対してどれだけ控えめであったかを表現するためだ。
このプロジェクトの話を聞いてまず、とても惹きつけられた。これは香港やなくなりつつあるフィルム映画に敬意を表すことが出来る素晴らしいチャンスだ。
撮影を終え、とても手ごたえを感じている。このプロジェクトに参加できてとても嬉しく思っている。

■「別れの夜」 パトリック・タム(譚家明)監督からのコメント■
私の担当は80年代だ。1997年の本土返還がそう遠くない未来に迫り、香港の人たちが将来について難しい決断をしなければならなかったこと、その大変さを、当時の大量移住の波が表している。それはとてもエモーショナルで、私は“去っていくこと”についてのストーリーを思いついた。短編での構成は挑戦的だと、このプロジェクトを初めて聞いたときに感じた。でもジョニー・トーはこう強調した。
そこにあるのは、“ただただ創造的な自由”だと。
それはとても魅力的で、最終的にはYesと答えていた。
私はこれまですべての映画をフィルム撮影してきた。フィルムかデジタルか、それはどうでもいいことだ。本質はストーリーと創造的なビジョンにある。
限りある素材と時間枠の中で私がこの「別れの夜」を完成することが出来たのは、友人たちの支えと今はそれぞれの道でプロとして働いている元教え子たちのい
る製作チームのおかげでしかない。私たちは、ほとんど同じ感覚で、映画に対するビジョンや価値観、そして労働倫理を共有している。全員が本当に献身的に関わってくれて、胸が熱くなった。積極的な参加と無私の貢献に感謝している。

■「回帰」 ユエン・ウーピン(袁和平)監督からのコメント■
ジョニー・トーとツイ・ハークがこのプロジェクトに私を誘ってくれた。この作品にはたくさんの監督が関わっている。そのパワーはとてつもないものだ。それぞれの監督が一つの時代(10年)の作品を撮るという以外のルールはなく、決められたテーマもない。
創造的な自由がそこにはあった。
私はある祖父と孫娘の物語を撮った。家族間でのすれ違いはよくあることで、それでも結局のところ家族の愛はすべてだ。家族は何の損得もなくお互いのために存在している。
これは作品としていいテーマだ。
私は祖父役にユン・ワーをキャスティングした。なぜなら彼はその祖父らしい雰囲気をもっているし、カンフーの腕前も披露することが出来る。そして孫娘役には新人をキャスティングしたかった。ラムはお行儀がよく、でもちょっと反抗的な孫娘をうまく演じてくれた。

■「ぼろ儲け」 ジョニー・トー(杜琪峯)監督からのコメント■
“オマハの賢人”ウォーレン・バフェットはかつて言った。
「他人が貪欲になっているときは恐る恐る。周りが怖がっているときは貪欲に。」
簡単に聞こえるが、人間には慎み深さがあるので、それができる人はほとんどいない。
状況に関係なく、私たちは貪欲さと恐怖に悩まされる。それこそ私が最も描きたいことだ。
香港映画は競争を恐れないという点で特別だ。事実、私たちはそれぞれの分野で自分自身も他人もベストを尽くせるように願っている。この健全な競争の精神は、香港の映画界にとどまらず、他の分野にも広まってほしい。

■「道に迷う」 リンゴ・ラム(林嶺東)監督からのコメント■
人々は監督としての私を怖がっている。なぜなら、頑固で執念深いからだ。彼らは私が強い信念をもっているために、難しい人間だと思っている。後悔はしていない、でも私は私の映画制作にかかわってくれた全ての人に感謝をしている。どうもありがとう。
私の映画制作者としての哲学は、要約すると“すべてやりきる、我慢しない”といったところだ。
この姿勢で取り組んだ作品だけが、その時の私の考えや想いを描くことが出来る。
自分の映画を見ることは自分が時間と共に成長するのを目の当たりにするようなものだ。作品自体を見返すことよりも、作品の裏にある困難やこれ以上ないような複雑さの記憶が私を感情的にさせる。事実、どれだけのスタッフが関わっていようとも私たちは誰一人同じではないのだ。
私のとりとめのなさもいつかは意味をなす、だから私は監督として自分自身に忠実でいようと思っている。シンプルな生活が実は幸せなことなのだ。流れに沿って行けば、特別などこかに辿り着く。それが私のすべての作品の基盤だ。
少し話し過ぎたようだ・・・映画をお楽しみください!

■「深い会話」 ツイ・ハーク(徐克)監督からのコメント■
私たちは監督としてフィルムと共に成長した。フィルムは私たちに一番初めに映画界に足を踏み入れた時を思い出させる。それは映画産業にとっても特別な経験であり思い出だ。
私の作品の舞台は未来だ。
そして、この雰囲気…というか、今の心境を表現したかった。
私は自分自身を完全にオープンで自由自在な場所に置きたかった、普通の世界である必要はなかった。そうすることで私は満足を感じるだろう。
もしこの作品について簡潔にまとめるとしたら、私はこう言う…誰もがおかしくて、世界ははじめからノーマルではなかった。さぁどうしていけばいいだろう?それが私の探求したいテーマだ。

一覧へ戻る Topへ戻る
©2021 Media Asia Film Production Limited All Rights Reserved