映画『七人樂隊』公式サイト 香港を代表する七人の監督による“香港七重奏”

「校長先生」アン・ホイ監督

大家好! 香港入境制限が緩和され、香港に行ける時が少しずつ近づいている気がしてわくわくしております。今回はアン・ホイ監督の「校長先生」です。

 『七人樂隊』は1950年代から未来までの香港を描いた作品だ。その中でアン・ホイ監督の「校長先生」は、ある小学校の物静かで生徒のことを常に考えて行動する校長と、その校長先生のお陰で道をはずさずにすんだ3人の生徒、そして校長先生を教師として尊敬し密かに心を寄せる女性教師の、1961年と2001年の2年を切り取って描いている。特に大きな事件が起きるわけでもなく、観客の心を大きく揺すぶることもない。ただ、淡々と過ぎる時の流れの中でも変わらない人と人の思いやりや優しい心に、この「校長先生」を観た後、少し…ほんの少し心温まりほんわかした気分になれる。

 校長先生を演じるのは、アン・ホイ監督いわく“犯人顔”のフランシス・ン(自分的にはン・ジャンユーの方がしっくりくるのだが……)。確かに以前は悪役のイメージが強い彼だが、今回は生徒を前に厳しい顔をしつつも生徒を見つめる目に優しさを見せるなど、セリフでなく顔の表情で素晴らしい演技をしている。

 ところで、この作品を観て思い出したことがある。以前香港人の友人宅で、仕事もせずに数か月を過ごしていた時、部屋に閉じこもり気味だった私に、友人が「墓参りに行こう」と声を掛けてきた。香港のお墓といえば、フルーツ・チャン監督『メイド・イン・ホンコン』の中で出てきた山一面に並ぶ墓地しかイメージがなかったのだが、連れていかれたのは中環(セントラル)の古いビルのワンフロア。中に入ると、棚(壁?)のようなものが並べられており、そこに証明写真大の小さな写真が並んでいた。その中の1枚の女性の写真を指差し、友人が「これが母親のお墓」と言った。最近は日本もマンション型のお墓(納骨堂)が増えてきているとはいえ、この香港のお墓には正直驚いた。こんな街中の普通のビルの中にお墓があるなんて、しかも自分が好きでよく行っていた雲吞麺屋さんの向かいにあるとは思いもよらなかった。

 アン・ホイ監督が長編文芸作品として温めていた構想を、今回短編として撮りあげた「校長先生」。まずはアン・ホイ監督のインタビューをご覧頂き、本編も劇場で観てほしい。

アン・ホイ監督インタビュー:https://youtu.be/NpibIozVApE

『七人樂隊』宣伝担当 小西晴文

 

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