大家好! まだまだ気軽に香港に行けない状況ですが、2019年は2週間に1回香港に行っていました。まるまる3年もの間香港に行っていないので、次香港に行ったとき道に迷うんじゃないかと思っています。そんな自分を見ているかのような気分になったのが今回紹介するリンゴ・ラム監督の「道に迷う」です。
久しぶりに新年(春節)を過ごすため妻、息子と共にイギリスから香港に戻ってきた男。ふたりと中環(セントラル)で待ち合わせるためフェリーで中環に来たが、フェリーターミナルは移転され見知らぬ場所に下ろされ、目印の大会堂も見当たらず、道を尋ねても「陸橋ですぐだ」と言われるだけ。疲れ果てベンチで一服しようとすると、禁煙エリアと言われてしまう。全く変わってしまった故郷・香港で道に迷ってしまう男だったが、なんとか妻と息子の姿を見つけ道を渡ろうとすると、そこに香港電車(路面電車)がやって来て……
以前はフェリーを降りて地下道を通り抜けると中環に行けたが、今は埋め立てられた先にフェリー乗り場が移転され、徒歩だと陸橋かIFCのショッピングモールを通り抜けるしか中環に行けない。街中では広東語と普通語(北京語)が入り混じるようになった。昔の香港とは全く異なった今の香港。そして映画撮影も以前とは異なり、フィルムでの撮影からデジタルでの撮影となり、そのことは大会堂で結婚写真を撮るシーンで間接的に語られている。この『七人樂隊』は35㎜フィルムで撮影された貴重な作品でもある。
「道に迷う」を撮ったのはリンゴ・ラム監督。チョウ・ユンファ主演の『友は風の彼方に』や『いつかの日かこの愛を』などを撮った名監督である。この『七人樂隊』のポスターやHPなどでリンゴ・ラム監督の名前だけ□(四角)に囲まれていることにお気づきだろうか? 香港映画ファンの方はご存知だと思うが、名前が四角で囲まれている人は故人であることを意味する。リンゴ・ラム監督は2018年12月に亡くなったが、この「道に迷う」が遺作となった。ちなみに劇中で息子を演じた青年は、監督の子息 ロイス・ラムである。
変化に取り残された男を演じるのはサイモン・ヤム。華やかに主演を飾るスター俳優ではないけれど、彼が出演しているだけで作品に重厚感が増すという感じがする。そんなサイモン・ヤムはとてもとても“良い人”。以前サモ・ハン監督にインタビューをしに行った現場にサイモン・ヤムが居たのだが、撮影をしていたホテルの従業員に自分から「ニーハオ!」と笑顔で声を掛け、気軽にサインや写真撮影に応えていた。私も拙い北京語で声を掛けると、彼から写真を撮ろうと言ってくれた。本当に良い人だった。そんな人柄の良さが、この少し頑固で時代遅れの男を憎めないキャラに仕立て上げているような気がする。
この数年香港に行けなくてもやもやしている方は是非「道に迷う」で近年の香港を見て楽しんでください!!
『七人樂隊』宣伝担当 小西晴文
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